3.理事長挨拶

理事長 鈴木啓介

近年、長距離移動手段の発達、新たな通信手段の普及により、世界中の国々や人々の”距離”は以前より縮まりました。一方、感染症の蔓延、国際紛争、地球温暖化を始め環境問題などが顕在化し、深刻さは増し続けています。こうした地球の持続可能性に関わる諸問題は、地球上の皆が真に近づき、手を携えて取り組まない限り解決できない性質のものです。その意味で民族、地域、宗教の違いを越えた相互理解、協力関係を実現することが必要です。

伊藤国際教育交流財団は、1991年、宗教法人真如苑開祖・故伊藤真乗大僧正のご遺志により設立されました。伊藤真乗大僧正が託されたのは、到来する時代の混迷を乗り越え、希望ある未来を築く礎となる、志高く、活力ある青年たちへのエールでした。

それを受け、私ども財団の切なる願いは、次の時代を担う奨学生の皆さんに、自ら選んだ分野で、思う存分研鑽を積む時間を過ごしてもらうこと、その後、活躍の場を得て、培った独自の力を遺憾なく発揮すること、そしてそれが地球の未来への布石となることです。

奨学生選考のキーワードはITO、すなわち、誠実さ(Integrity)、才能(Talent)、独創性(Originality)です。特徴的なことは、各人の個性を尊重し、学ぶ場所、専門分野(新興分野も含め)などを問わず、ともかく次代を担うことへの期待値で評価することです。この奨学金が一助となり、集中的な研鑽によって高い専門性と広い視野を磨き、他にはない独自のやり方で世界に貢献する、個性輝く人物へと雄飛してくれることを期待するからです。

本奨学事業は、大学院修士課程での修学のため、1)海外へ渡航する日本人留学生、ならびに、2)海外から来日する外国人留学生、に対する支援を二本柱としています。設立以来30年あまり、奨学生の延べ人数は600名を越えましたが、かつて本邦ならびに世界各地で研鑽を積んだ方々の多くは広く世界で活躍し始めています。

去る2021年、当財団は30周年の節目を迎えましたが、40周年、50周年と先を見据え、これまで積み重ねてきた奨学制度をさらに充実させるべく、鋭意努力して参ります。奨学生が学業に専念できるよう、支援内容を時代に即応するよう努める所存です。また、運営面では各方面で活躍されている方々のご参画、ご協力を仰ぎ、常に工夫して参りたく存じます。

皆さまのご理解とご支援を賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。

2022年7月